財閥によって支配されるフィリピンの貧富の差

ASEAN諸国は近年目覚ましい経済成長を遂げています。
特にASEAN主要国であるインドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイの5カ国には注目が集まっています。
中でもインドネシア、フィリピン、ベトナムは人口も多く、内需も堅調なのでこれからさらに期待できそうです。
そんなASEAN主要5カ国の中でも貧富の差が激しいと言われるフィリピンについて今日は書いていきたいと思います。

貧富の差が激しいフィリピンの現状

ASEANの主要5カ国の中でもストリートチルドレンの数が圧倒的に多いのがフィリピンで、実際に統計をとったわけではないですが首都マニラの繁華街を訪問すれば物乞いの子供がたくさんおり、「マネー」と言いながら近づいてきます。

マニラだけではなく観光地のセブでも多くのストリートチルドレンがおり、現地を訪れている日本人留学生などが子供にスマートフォンや財布を無理やり強奪される事件が頻発しているのだそうです。
これだけの数のストリートチルドレンは他の4カ国にはおらず私が訪問した際は1人もストリートチルドレンを見かけませんでした。

実際にフィリピンの経済格差は数字で現れており、格差をあらわす指標の「ジニ係数」はフィリピンは0.444(2015年)でした。
*ジニ係数=所得分配の不平等の程度を計る数値

この数字は他の東南アジア主要国と比べると際立って高いです。

ジニ係数は0に近づくほど所得が国民に平等に分配されている状態で、1に近づくと不平等を表します。
0.4を越えるとデモや暴徒化が起きると言われており、フィリピンはすでにそのラインを超えており、いかにフィリピンの格差がひどいかがわかると思います。

またその国の経済状態・生活水準を測る「エンゲル係数」で見てもフィリピン家庭の平均値は0.428となっており、生活に余裕がないことがわかります。
エンゲル係数は高いほど生活水準が低いとされており、ちなみ日本の場合は0.235(2013年)となっています。

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財閥が国民の富を独占

フィリピンの街並みを見ても、数字を見ても国民が苦しい生活を送っている現状がわかります。
原因の一つとしてあげられるのがフィリピンを牛耳っていると言われる財閥の存在です。アメリカと同様にフィリピンも一部の上流階級が多くの富を独占し、国民には再分配が行われていません。
フィリピンの金持ちは日本の金持ちよりはるかに富を持っているとも言われています。

フィリピンの財閥は大きく2つに分けて、スペイン系中華系に分かれます。

スペイン系で代表されるのがAyala(アヤラ)です。
Ayalaは非常に巨大でフィリピンの中でもっとも強大なグループと言われています。主な事業は不動産業でフィリピン最大のビジネス街マカティの開発も手掛けました。

近年ではスペイン系財閥はアヤラのみが勢力を維持しており、他大半は勢力を失っています。

中華系で代表されるのがヘンリーシー率いるシー財閥のSM Investments(エスエム インベストメント)です。
主な事業は小売最大大手のSM系のショッピングモールです。ちなみにファーストリテイリングがフィリピンで合弁してユニクロを展開しているのもSMです。

中華系はその他にもフィリピン航空を保有しているルシオ・タン財閥などがあります。

フィリピンでは経済の8割ほどを財閥が占めていると言われており、もちろん主要な産業はすべて財閥が支配しています。

まとめ

純粋なフィリピン系の財閥が存在しないというのも異様な状況であり、政治家は財閥出身が多く政治も財閥に牛耳られています。
フィリピンの一般庶民の人件費が上がらない理由は財閥がコントロールしているからという説もあります。

フィリピンでは今後ますます経済成長が続いていくと予想されていますが、国の成長の影で国民が苦しい思いをしているこの状況は一刻も早く解決するべきだと思います。